今から半世紀前までは女性の寿命は50歳、閉経後の人生が残り少ないこともあって、閉経は自然の生体的現象だから自然に逆らってまで薬物による修飾はすべきではないと云うのが従前の社会的通念でした。
でも今や女性の平均寿命は86歳、ということは閉経後の人生はまだ寿命の1/3以上もあるということなのです。
一方、女性ホルモンのエストラジオール(E2)は男性にもあって、女性のE2の分泌量は加齢と共に減少し、閉経後55歳で男女のE2値は同等となり、60歳以降は何と、女性のE2値は男性の1/2になるのです。
そこでこの残りの人生を女性ホルモンの低下欠乏のまま過ごして行っていいものだろうか?という疑問が起こっても不思議ではない筈です。
ここに登場したのがHRTなのです。
これは、閉経後の人生に、より高いQOL(生活の質)とより高い付加価値を提供していく恵み豊かな薬剤療法なのです。
女性は閉経を境に、多少の個人差はあるにしても、自律神経失調症状、精神神経症状、泌尿生殖器症状、骨量低下などの身体症状が出現して来ます。
そこで患者さんはその症状に該当する科を選んで受診し、一方医師はその訴えに応じて対症療法を施行するというのが従来の一般的パターンでした。
しかし今では、閉経後のそれらの症状は女性ホルモンの低下欠乏によって起こるということが明らかになって来ました。
ですから、ここに敢えて私が言いたいことは、1には、対症療法以前にHRTありき、諺(ことわざ)にたとえれば“隗(かい)より始めよ”と云うことと、2には、E2が男性の1/2になる60歳以降もHRTは続けていくのが望ましいということなのです。
私はHRTを県下でもいち早く着手して以来、HRTをライフワークとして今日まで取り組んで来ています。
その間しばしば講演やラジオ放送もさせて戴きましたが、過去に女性セブンの“更年期障 害で行く女性が選んだいい病院”、また2013年9月には週刊朝日にて「女性のためのいい病院」に も推薦され嬉しく思っています。
最近では、初期のHRTのEとPの経口様式にとって代わって、①肝臓を通さないエストロゲンの塗布剤及び貼付剤(このケースでも経口のプロゲステロン錠は併用しなければなりません)と、②エストロゲンとプロゲステロンの合剤(E+P)の経口剤及び貼付剤がHRTの主流になりつつあります。
原則的には、メノエイド(E+Pの貼付剤) を。
かぶれ易い方は、ウエールナラ(E+Pの経口剤)を。
服用中に出血があって気になる方はウエールナラに代えて隔日服用を。
子宮を摘出された方は、エストラーナ(Eの貼付剤)か、ディビゲル(Eの塗布剤)か、プレマリン(Eの経口剤)を。
60歳頃からは、Pを付加せず、低容量の女性ホルモンのエストリオール(E3)単独投与を。
集中力がつき、やる気が出て来ます。
私は最近HRTのメリットは、更年期症状を始め種々の身体的症状の改善もさることながら、その最大のメリットは何と言ってもモチベーションの向上にあると思っています。
更年期症状の改善
ほてり、異常発汗、腰手足の冷え、イライラ感、動悸息切れ、頭痛、めまい、吐き気、肩こり、腰痛、不安感うつ感、寝つきが悪く眠りが浅い、という更年期症状のいずれかが改善されて来ます。
皮膚の衰えの改善
結合組織のコラーゲン量が維持されますので、皮膚の張りや艶が良くなり、お化粧のノリも良くなります。
膣壁の萎縮,乾燥の改善
膣壁の表層細胞がきれいになり、膣壁に潤いが戻ってくる為に、膣の乾燥感、性交痛、性交不快感が改善されて以前と変わらぬ性生活が取り戻せます。
頻尿、尿失禁の改善
中でも頻尿は有意に改善が見られます。
記憶力低下の改善…脳の血流が良くなり
アセチールコリンの分泌が昂まる結果、記憶力が甦ってくるのでボケ防止には有効で、最近はアルツハイマー病の初期には有効であることが解明されて来ました。
子宮内膜がん
閉経後の子宮がんはその殆どが子宮内膜がんです。
内膜はエストゲンによって増殖するのでエストロゲン単独ではそのリスクも高まります。
そこでHRTはまだ子宮のある方にはプロゲステロンを併用して、逆にその発生率をHRT非施行者の25%も減少させますのでHRTはむしろメリットの範疇に入ると考えます。
骨粗鬆(しょう)症
女性は20歳〜30歳にかけて最大骨量に達した後は、年1%の割で骨量は減少して行き、閉経後の5年間は毎年3%ずつ減少しこの5年間で15〜20%の骨量が失われると言われています。
ですからHRTはエストロゲンを補充することによって骨吸収を防ぐ極めて合理的な療法と言えます。
しかも骨吸収を予防するだけではなく、骨量がかなり減った状態でもある程度までは回復させることが出来るという大きなメリットがあります。
また最近では下顎骨の骨量の減少を抑制することから歯が抜けにくくなることが分かって来ました。
その他
最近、HRTは大腸がんやリュウマチ性関節痛や老人白内障の予防にも有効だと云われています。
HRTのリスクと言えば、乳がんくらいです。
ただしHRTは乳がんの促進因子ではあっても起始因子ではありませんし、万一HRT施行中に乳がんの発生を見たとしても、エストロゲン由来の乳がんは比較的良性且つ限局性でその進行も遅く予後も良性のタイプですし、また乳がんは他のがんに比べるとダブリングタイム(倍,倍になる時間)が長いこともあって進行が遅い(2cmまでは1期ですが、乳がんが1cmになるまでは8〜10年かかります)ので、年1回の検査さえを受けていればさほどご心配には及びません。
因みに、当院ではHRT施行以来、これに由来する乳がん患者はまだ1例もありません。
少量の不正子宮出血
閉経後まだ子宮内膜が完全に萎縮していない方は、服用中に時としてスポット様の少量出血があって気にされる方もおられますが、それも服用を続けることによって漸次減少しやがては無くなって来ます。
でも中には出血が長期に続いたり量が多かったりする場合は、HRTの種類を変更したり、連日服用を隔日服用にすることで対応可能です。
軽度の体重増加
服用始めの頃に体重増加が見られることがありますが、これも服用を続けることによってそれ以上の増加は見られなくなります。
肥満の方にはHRTはそぐわないと思います。
小山嵩夫 2002
上の図表を見る限り、日本は世界どころか近隣の台湾や韓国にさえ遅れをとっています。
これは日本には古くから“女性ホルモンは怖い”という神話が根付いている事と、医師の 中にもまだまだ女性ホルモンアレルギーをお持ちの先生方も決して少なくないからです。
しかし、最近しきりとメディアはHRTを取り上げてくれていますので、いずれ日本のHRTも市民権を得て一気に普及率が上昇するに違いないと信じています。
HRTは恵み豊かな療法ですが、諺に“備えあれば憂いなし”とありますように、矢張り検査だけは欠かさず受けて下さい。
1回目 | ●尿および血液の検査 ●子宮がん検診 事前に超音波にて子宮内膜の厚さを測定して、 (1)4ミリ以内なら子宮頚部の細胞診を施行。 (2)4ミリ以上なら子宮内膜の細胞診を施行。 ●乳がん検診 当院では超音波による検診です。 ●骨密度検診 当院では、前腕骨のDXA法です。 |
---|---|
2回目 | ●1回目の半年後、尿と血液の検査。 |
“右肩上がりに幸せな”人生を
人の一生は皆それぞれに違いましょう。
でもどうでしょう?人は誰しも人生の幕引き時に、ああ昔はあんなに良かったのにと悲しみ嘆くよりは、今が生涯最高の幸せと思える方を選びたいでしょう。
その為には常日頃から前向きに“右肩上がりに幸せな”人生をと心掛けて生きていくことが大切ではないでしょうか。
ところで、私が今もってこうして頑張っているせいか、最近周りの人達からその元気の秘訣は?とよく訊ねられるようになりました。
そこで私はその元気の所以は一体何処にあるかを、自分なりに思い当たることをランダムにラインナップして見ましたので、蚯蚓の戯言くらいな軽い気持ちでお読み頂き一つでも二つでも拾って頂けたら幸いに存じます。
廃用性筋萎縮という言葉をご存知ですか?これは病気や骨折などで長期入院になった場合、使わなくなった筋肉が萎縮して本来の働きが出来難くなるという意味です。
脳にも同じことが言えます。
頭も使わなければ衰えます。
私は生来どちらかと言うと好奇心と知識欲は旺盛な方で、今もなおそれは衰えてはいないようです。
その根底には一つでも知らずして終ってしまっては勿体ないという気持ちがあるような気がします。
私にはいつの間にか、新聞雑誌、テレビ、講演会、人との会話などこれだと思ったものは躊躇わず拾う、また分からないことは即ネットを開く習性も身について来たようです。
神経細胞は或る年齢からはもう増殖が止まり以降は1日に10万個ずつ死滅していくと云われていますが、記憶の司令塔と云われる海馬の神経細胞だけは年齢に関わらず増殖可能なのです。
その為には、指先を動かすこと、物事を順序立てて考えること、よくお喋りすること、ウオーキング、脳トレなどが有効です。
それによって海馬や前頭前野のシナプスが増えて脳は活性化して神経回路のネットワークが密になります。
私は、好奇心や知識欲が心身を総括制御している脳を活性化させれば、肌の色つやまでも含めたあらゆる心身機能が若返って来るに違いないし、また私のイキイキの源はその辺にあるのだという思いを強くして、今日に至っております。
廃用性筋萎縮という言葉をご存知ですか?これは病気や骨折などで長期入院になった場合、使わなくなった筋肉が萎縮して本来の働きが出来難くなるという意味です。
脳にも同じことが言えます。
頭も使わなければ衰えます。
私は生来どちらかと言うと好奇心と知識欲は旺盛な方で、今もなおそれは衰えてはいないようです。
その根底には一つでも知らずして終ってしまっては勿体ないという気持ちがあるような気がします。
私にはいつの間にか、新聞雑誌、テレビ、講演会、人との会話などこれだと思ったものは躊躇わず拾う、また分からないことは即ネットを開く習性も身について来たようです。
神経細胞は或る年齢からはもう増殖が止まり以降は1日に10万個ずつ死滅していくと云われていますが、記憶の司令塔と云われる海馬の神経細胞だけは年齢に関わらず増殖可能なのです。
その為には、指先を動かすこと、物事を順序立てて考えること、よくお喋りすること、ウオーキング、脳トレなどが有効です。
それによって海馬や前頭前野のシナプスが増えて脳は活性化して神経回路のネットワークが密になります。
私は、好奇心や知識欲が心身を総括制御している脳を活性化させれば、肌の色つやまでも含めたあらゆる心身機能が若返って来るに違いないし、また私のイキイキの源はその辺にあるのだという思いを強くして、今日に至っております。
コップに半分残った水を「もう半分しかない」ではなく「未だ半分もあるさ」と、常に物事を好いように好いように採ること。
人の嫌がることを言ったりしたりしないこと。
後悔先に立たずで結構ストレスを引ずりますから。
嫌なことは翌日まで持ち越さない。諺に“人の噂も75日”とあるように人の噂さえ75日も経てば自然消滅してしまうもの。
それなら、気持ちの持ち方次第、意志の強さ次第では、30日と云わず、10日と云わず、2日、1日でも忘却の彼方へと追いやることも決して不可能では無い筈です。
その日のことは成るべくその日のうちに片付けて、翌日まで持ち越さないこと。
延ばし延ばしにすると、結構ストレスになりますから。
いつも何か目標を身近に置いて、さあカウントダウン、7,6,5、ああ、後2日、後1日と毎日毎日心にトキメキを持つこと。
その目標も難しく考えることなく、例えば、旅行、映画、ゴルフ、会食、孫に会う、テレビの連続ドラマ、スターの追っかけ等何でもいいでしょう。
人は所詮自分を必要としている人がいないと生きにくいものです。
相手は配偶者、家族、友人、恋人でも、或いは各種のボランティアでもそうでしょう。私は以前から“誰かの為に何かをする”ことがこの世の生き甲斐の最たるものと思って来ましたし、また諺に“情けは人の為ならず”といって、その良き報いは必ず自分に返って来るもののように思いますし、また“誰かの為に何かをする”ことは自分を高めることにも通じると思います。
私は生来根明で日常的に笑いが多い方ですが、笑いには、ストレスによって崩れた身体の神経系、内分泌系、免疫系のバランスをリセットするという効用があります。
その結果、情緒が安定して感情が豊かになり、また血管が拡張して特に前頭葉の血流が良くなって脳神経細胞が活性化しますし、またがん細胞やウイルスを殺すNK細胞も活性化してくると云われています。
妙に大人になりきらないこと。
人間にとって大切なナイーヴでみずみずしい感性をを錆び付かせない為にも、いつまでも子供っぽさを温存していきたいものです。
外出時にはいつも意識して背筋を伸ばし、股を狭めるようにして歩きます。
背筋が弱れば全体に前かがみ所謂猫背に、内転筋が弱れば所謂ガニ股歩きになりたくないからです。
また外出にもいつも気を遣っています。
これは俗に言う“いい格好しい”ではなく、自分を律することに通じると思うからです。
検査
検査は前倒し、転ばぬ先の杖をいつも念頭に。
まあ年2回は健康診査を受けたいもの。
検査は病気を見つけるよりも、安心する為に受けるものだと思います。
何も無かったらほっと胸を撫で下ろし、何かあったらああ早く来て良かったということです。
検査値
自分の主な検査値は頭に入れておく。まあ、血圧、、肝機能値、コレステロール値、血糖値などの他、自分の悪いところの検査値くらいは。
運動
運動にはウオーキングが一番だそうで、”1日約30分距離にして約3km、1週間で20km位を目安に。汗がにじむ程度の早足で”と云われています。
--- 私の場合はこれは無理ですが、私の運動と云えば、私は医業と家庭の主夫を兼任していますので、週に3日は家から400m程の市場に買い物に行ったり、また診療時間中にも患者の切れ目には、やれ洗濯物、やれ食器、やれ配達物等などで、1日10回は1階の診察室と3階と4階の家庭との階段を上り下りしている位ですが、何でもこの階段の上り下りがカロリー消費にかなり有効らしいのです。
水分の摂取
水分はたっぷり摂る。
出来れば1日2ml近くは。
血液がサラサラになり動脈硬化や高尿酸血症の予防にもなるし、また便もある程度は軟らかくなり消化時間も速く排便回数も多くなるので、肥満や大腸がんの予防にもなると云われていますから。
睡眠
睡眠は1日7時間はとりたいもの。
睡眠中には、たんぱく質を合成する成長ホルモンの分泌が盛んになるため、新陳代謝が良くなり、生体の傷ついた細胞を修復したり、筋肉が増えて脂肪の燃焼を高めたり、骨量を増やしたり、免疫細胞が多く産生されたり、好いことずくめなのです。